「英語ができないけど、海外で生活ってできるの?」
これは私自身が渡航前に何度も自問していた疑問です。
最近では翻訳アプリやAI通訳も発達し、「英語が話せなくてもなんとかなる」と言われることも多いですが、本当にそうでしょうか?
実際にアメリカで生活を始めてみてわかったのは、英語力が“なくても生きてはいけるけど、あればあるほど生活の質が上がる”ということでした。
この記事では、英語がほとんどできない状態でアメリカに来た私の体験をもとに、どんな場面で英語が必要になるのか、英語力がどのように生活に影響するのかをまとめています。
これから海外に住んでみたい方、留学や移住を考えている方の参考になれば嬉しいです。
はじめに
海外生活を始めるとき、多くの人が不安に感じるのが「どの程度の英語力が必要なのか」という点です。英語が話せなくても翻訳アプリがあるし、何とかなるんじゃない?と思う人もいるかもしれません。実際、私も最初はそう思っていました。
なぜ英語力が必要なのか?
結論から言うと、英語力は“円滑な”コミュニケーションのために必要です。
この「円滑に」というのが、実はとても大事なキーワードです。
現代はAI翻訳や通訳アプリも進化していて、役所での手続きや病院での診察など、多少英語ができなくても何とかなる場面は増えました。私自身も、難しい単語やフレーズを知らなくても、翻訳ツールと身振り手振りで乗り切れた経験があります。
ただし、それはあくまで「相手が仕事として対応してくれている場合」の話。
窓口の人や医師などは、こちらの英語力が不十分でも辛抱強く話を聞いてくれます。それが彼らの仕事であり、対応の一部だからです。
でも、これがプライベートの場面――たとえば、ご近所さんや保護者同士、あるいは職場のランチタイムなど――になると話は変わってきます。わざわざ英語があまり話せない私に、積極的に話しかけてくれる人はそう多くありません。
「通じる」ではなく「自然に話せる」ことが大切
つまり、英語力がなくても生きてはいけます。でも、「自然な人間関係を築く」ことを考えるなら、英語力は欠かせません。
翻訳アプリでは補えない、ちょっとしたジョークや相づち、日常会話のテンポ感が、円滑な関係づくりには重要です。
海外生活は、ただ「生活するだけ」ではなく、現地の人と関わり、心地よい日々を過ごすことが目的でもあります。そう考えると、英語力は“快適な海外生活の土台”とも言えるのです。
英語ができなくても生活できる?
結論:できます。ただし「できる」と「快適に暮らせる」は別の話です。
私はアメリカに来た初日、市役所で社会保障番号(SSN)を取得する必要がありました。当時はほとんど英語が話せなかったのですが、身振り手振りと書類を頼りに、どうにか申請を終えることができました。
その後も、病院での診察や保険の手続き、さらには確定申告といった、いわゆる“専門的な英語”が求められる場面を何とか乗り越えてきました。今思えば、よくやってこれたな…と自分でも驚きます。
意外だった、アメリカの「無料英会話教室」
アメリカに来てから特に驚いたのは、無料の英会話教室が意外とたくさんあることでした。
いくつかの州では、就職支援の一環として州が運営する英語教室があり、英語を母語としない移民向けに提供されています。また、教会が地域への奉仕や布教活動の一環として無料で英会話レッスンを行っているケースもあります。
「物価が高いアメリカで、英会話なんて高くつくに違いない」と思っていた私は、その存在を知って驚きました。しかも、講師はほとんどがネイティブ。内容も実践的で、日本の一般的な英会話スクールよりもはるかに“生きた英語”を学べる印象です。
お金がなくても、学べる環境がある
もちろん、有料の語学学校に通うこともできますが、工夫すればお金をかけずに英語を学ぶ手段はたくさんあるというのは、アメリカで生活を始めて初めて気づいたことでした。
英語力がゼロでも、生活を「始める」ことはできます。けれど、生活を「楽しむ」ためには、やはり英語を学び続けることが大切だと、今では実感しています。
英語力が必要なシーン別まとめ
海外で生活していると、毎日のように英語に触れる場面があります。ただ「どんな英語が」「どんな状況で」必要なのかは、実際に住んでみないとわからないものです。ここでは、私自身の経験をもとに、英語力が特に求められるシーンを紹介します。
🛒 スーパーやレストラン(買い物)
意外と盲点なのが、お酒やたばこを買うときの年齢確認です。日本人は若く見られることが多く、アメリカではほぼ100%「ID(アイディー)を見せて」と言われます。
私は渡米して間もない頃、”ID, please.” と言われたとき、会員カードか何かを求められているのかと思って「持ってません」と答えてしまいました。すると店員さんと後ろのお客さんが、なんとも言えない苦笑い…。
“ID” は「身分証明書(=免許証やパスポート)」の意味。覚えておくと安心です。
🏥 病院や薬局(緊急時)
アメリカに来て最初の頃、なぜかよく風邪をひいていました。聞いた話では、日本とアメリカでは流行る病気の種類が違うらしく、免疫がなかったのかもしれません。
病院に行くと、当然すべて英語。医療用語は特に難しく、何度も空返事してしまったことを覚えています。「今の説明、ちゃんと聞き取れてなかったけど大丈夫かな…」と心配になることも。
ただ、アメリカの医療スタッフは英語が得意でない患者に慣れているので、翻訳機を使ったり、簡単な英語や動画で説明してくれることが多いです。とはいえ、体調が悪いときに聞き取れない英語が飛んでくるのは、かなりつらいです。
🎒 学校や保育園(子どもがいる場合)
お子さんがいる家庭では、学校関係の英語対応も避けられません。入学説明会や見学会、保護者面談など、内容も多岐にわたります。
私は、入学式で先生が何を言っているのかほとんどわかりませんでした。前提知識がないと、英語がわかっていても意味をつかめないのです。
ただ、行事などは「持ち物」「服装」「集合時間」などが明確に書かれているので、説明文を読めば対応できることも多く、慣れてくると少しずつ安心できるようになりました。
🏦 役所・銀行・公共サービス
銀行で口座を開くのは一苦労でした。必要な書類をそろえるだけでも一苦労で、しかも銀行によって必要書類が違うことがあります。
英語の案内を読むのはまるでTOEICの長文問題よりも難しいと感じるほどでした。
さらに驚いたのは、日本のようにカウンターでサクッと手続きが終わるわけではないこと。アメリカでは、口座開設も予約制で、個室ブースでじっくり話すスタイルが一般的なんです。
💼 職場やネットワーキング
職場での英語は、今でも難しいと感じます。というのも、英語がわかる・わからない以前に、内容が専門的すぎて日本語でも理解できるか怪しいレベルだからです。
ただ、日本でも他部署とのやり取りや専門職との会話では、知らない単語が飛び交うのは同じ。すべてを理解しようとするより、「要点をつかむ力」が大事だと学びました。
また、会議やメールで使われる表現には独特のパターンがあるので、慣れてくると次第に読み取れるようになります。
最低限押さえておきたい英語力の目安
「英語力が必要」と一口に言っても、どのスキルがどの程度あればいいのかは人によってイメージが異なります。ここでは、私の経験をもとに「海外生活で最低限必要だと感じた英語力」について、スキルごとにまとめてみます。
🎧 リスニング:相手の言っていることが聞き取れるか?
個人的に、リスニングが最も重要だと思います。
なぜなら、仮に自分が話せなかったとしても、相手の言っていることが理解できれば、「Yes/No」で最低限のコミュニケーションは取れるからです。
ただし、会議や複数人での会話になると事情は変わります。特に職場での大規模なミーティングやプロジェクトでは、発言のテンポが早く、聞き手に合わせてくれる余裕もあまりありません。
このような場面では、要点を聞き取る力が問われます。すべてを理解しようとせず、キーワードを拾う意識が大切です。
🗣️ スピーキング:意思表示・質問ができるか?
スピーキングが苦手でも、日常生活や基本的な仕事はなんとか回せます。ただし、それだけでは評価されにくいのが現実です。
海外では、自分の考えを言葉にして伝えること=積極性やプロ意識の表れと見なされることが多く、発言しないと「やる気がない」「何を考えているかわからない」と思われてしまうこともあります。
私はスピーキングにあまり自信がないので、口頭でうまく伝えられなかったと感じた場合、あとでチャットやメールで補足する癖がつきました。
それでも「伝える努力をしている」ことが評価される場合もあるので、発信する姿勢そのものが重要だと感じます。
📄 リーディング:書類や張り紙が読めるか?
読解力は慣れがものを言うと思います。たとえば、日本語でも新卒の頃より、今のほうが書類を読むスピードが上がったと感じる方は多いはずです。
英語も同じで、使われる語彙や言い回しに慣れれば、少しずつ読みやすくなってきます。
ただし一つ気をつけたいのが、ネイティブの書く文章が必ずしも「わかりやすい」とは限らないこと。長い文章なのに主語や目的がはっきりしない、回りくどい表現が続く…そんなメールを受け取ることもあります。
そういうときは、「何が言いたいのか」を自分なりに要約する力が問われるなと感じました。
✍️ ライティング:メールで問い合わせができるか?
メールは定型表現を覚えてしまえば、ある程度テンプレート的に対応できるので、意外とハードルは低いです。
“Could you please…?” や “I would appreciate it if…” といった決まり文句をいくつか覚えておくと、仕事でもプライベートでも役立ちます。
ただし、ちょっとしたニュアンスや感情の表現になると、一気に難しくなるのも事実です。
日本語でも言葉選びに気を使う場面はありますよね。たとえば、「お忙しいところ恐縮ですが…」のような気配り表現を英語で自然に書くには、ある程度の経験が必要です。
とはいえ、まずは基本的な表現をしっかり使えるようになることが第一歩です。
海外生活者の英語失敗談&学び
海外での生活は、英語との“すれ違い”の連続です。教科書通りにいかないことも多く、失敗しながら少しずつコツをつかんでいく、そんな日々の中で感じたことを共有します。
💬 よくある誤解・通じなかった表現
あるとき、税金の請求が想定よりも高く、アメリカの国税庁(IRS)に電話で問い合わせをしたことがありました。もちろん、電話口の相手は英語しか話しません。
話の切り出し方がよくわからず、毎回
“My name is… I’m reaching out to you because…”
のようなどこかぎこちない言い回しをしていました。今思えば、もう少しシンプルに
“Hi, I have a question about my tax bill.”
くらいで良かったのかもしれません。
また、「承知しました」「お疲れ様です」といった日本特有のビジネス表現に相当する英語が見つからず、メールやチャットで変な言い回しを使ってしまったことも何度かあります。
英語では、そもそもそのような丁寧さが求められない場面も多いため、「無理に翻訳しようとしない」「英語らしい自然な言い回しに切り替える」意識が必要だと感じました。
✅ 「この一言覚えていてよかった!」体験談
「英語の決まり文句」とは少し違いますが、意外だったのは、日本で身につけた堅めのビジネスメールのフォーマットが、英語でもけっこう役に立ったことです。
アメリカでは、カジュアルな文面でメールを送ってくる人が多く、逆に内容があいまいだったり、必要な情報が欠けていたりすることもあります。
その点、日本で染みついた
件名:明確に
冒頭:要件の背景と目的
本文:ポイントを箇条書き、必要に応じて補足
結び:行動を促す一文+締めの挨拶
といった構成を活かして、英語でも「読みやすい」「丁寧」「誤解が生まれにくい」メールが書けるようになったのは、大きな強みになりました。
たとえば、
“Just to summarize the next steps:”
のような区切りのフレーズや、
“Please feel free to reach out if you have any questions.”
といった定番の締めの表現を繰り返し使いながら、自然と「使える英語」が自分の中に蓄積されていったのを感じます。
英語力をつけるためにできること
海外生活において英語力は“あった方が圧倒的に楽”になります。では、どうやってその英語力を身につけていけばいいのでしょうか?ここでは、渡航前・渡航後それぞれの段階でできることを、私の実体験を交えて紹介します。
✈️ 渡航前にやっておきたい英語学習
時間とお金に余裕があるなら、オンライン英会話は本当におすすめです。
私は、渡航前に
- Bizmates(1年間)
- DMM英会話(3年間)
を利用しました。Bizmatesはビジネス英語に特化しており、仕事で使う表現やマインドセットも学べたのがよかったです。DMM英会話は講師の選択肢が豊富で、気軽に続けやすかったのが印象的でした。
さらに、毎日英作文を提出して添削してもらえる「IDIY(アイディー)」というサービスも併用しました。これはライティングの勉強にとても効果があり、実際のメール文や自己紹介などを実践的に書く力がついたと思います。
他にも、短期間だけ試したオンライン英会話サービスはいくつもあります。正直、続けている間は「本当に力がついているのかな?」と疑問を感じることもありましたが、アメリカに来てからその効果を実感しました。
ちなみに、いくつかのサービスについてはブログでも紹介記事を書いているので、もし興味があればご覧ください(※アフィリエイトリンクあり)。

🌍 現地でのおすすめ勉強法・アプリ・YouTubeなど
アメリカに来ると、自然と英語に触れる機会が増えるのは間違いありません。ただ、それだけで上達するわけではないので、**「なじむ努力」や「積極性」**が重要です。
たとえば私が活用しているのは:
- 地域の無料英会話教室(州や教会が提供)
- Netflix や Amazon Prime の英語字幕での視聴
- YouTube の英語学習チャンネル(特にリスニングと発音に効果あり)
特にサブスク動画サービスは、英語字幕しかない番組が多く、日本語に頼らず観る習慣が自然と身につきます。最初は難しくても、字幕を読みながら「こう言うんだ」と覚えることが増えていきます。
また、現地で出会った人との会話やイベント参加なども、「間違ってもいいから話す」ことを意識すれば、自然と英語力が上がっていきます。
英語力は一朝一夕には身につきませんが、継続と実践で確実に伸びていきます。
海外に来てからも学び続ける姿勢さえあれば、必ず自分の味方になってくれます。
まとめ:英語力が“ある”と、海外生活はもっと楽しくなる
いかがでしたでしょうか?
結局のところ、英語力がなくても海外生活はなんとかなります。翻訳アプリや周囲のサポート、そして何より“気合いと工夫”で乗り切ることは可能です。
でも、やはり英語力があると、できることが広がり、日々の生活がより楽しくなるのも事実です。
誰かと自然に会話できるようになると、買い物や学校行事、ちょっとした雑談までもが「特別な体験」ではなく、「自分の生活の一部」に変わっていきます。
とはいえ、日本にいる段階では、どんな場面でどんな英語が必要になるのか、想像が難しいかもしれません。
だからこそ、今回紹介した私の体験談が、「あ、こういう場面で困るんだな」「こんな言い方が役立つのか」という学習のヒントになれば嬉しいです。
英語は“できる・できない”ではなく、“慣れる・使ってみる”もの。
焦らず、でも着実に、準備しておくことが海外生活の安心感につながります。
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