「英語の本を読んでみたいけど、どこから始めればいいの?」
そんな英語学習者にぴったりの1冊が、Gail Honeyman の『Eleanor Oliphant Is Completely Fine』です。
やさしい英語で書かれていながら、心にじんわり響く物語。
多読初心者でも安心して読み進められる内容と文体で、英語力だけでなく読解力や感受性も育ててくれます。
『Eleanor Oliphant Is Completely Fine』は、2017年5月18日にイギリスで初めて出版されたGail Honeymanのデビュー小説です。その優しい語り口と心に響くストーリーは、すぐに読者の心をつかみました。
- イギリスの「Costa Debut Novel Award」(最優秀デビュー小説賞)を受賞 amazon.com+2en.wikipedia.org+2en.wikipedia.org+2
- アメリカでもAudie賞(オーディオブック部門)を受賞し、高く評価されました amazon.com+2en.wikipedia.org+2en.wikipedia.org+2
- 海外レビューでは「静かな暖かさと深い悲しさが共存する物語」「ユーモアと感動のバランスが絶妙」と高評価
英語圏では「up-lit」(心温まる作品)というジャンルを代表する本として、多くの読者に愛されています。
発売後すぐに話題になり、Reese Witherspoonのブッククラブに選ばれるなど、今でも海外で多くの学習者や読書ファンに支持されています
本のあらすじ(ネタバレなし)
「私はこれで十分」
エレノア・オリファントは、一人で生きることに何の疑問も感じていません。
平日はオフィスで働き、週末は冷凍ピザとウォッカで過ごす日々。友達も恋人もおらず、職場でも孤立していますが、彼女はそれが「普通」で「完全に問題なし(completely fine)」だと思っています。
小さな出会い、大きな変化の予感
そんなある日、同僚のレイモンドと道で倒れた老人・サミーを助けたことで、少しずつ世界が動きはじめます。
エレノアはレイモンドと一緒に行動したり、サミーの家族と関わる中で、「人とつながる」ことの温かさを知っていきます。
その一方で、彼女はあるミュージシャンに一方的な憧れを抱き、彼に「ふさわしい自分」になろうと奮闘します。
理想と現実のギャップに飲まれて
彼に会いたい。その一心で外見を変え、コンサートにも出かけます。
でも現実は、彼女の想像とはまったく違うものでした。
期待が打ち砕かれ、エレノアの心は大きく揺らぎはじめます。
少しずつ築いてきた変化の手応えも、過去の記憶と混ざり合い、彼女を深い孤独の中へと引き戻していきます。
📖 「自分は本当に“完全に大丈夫”なのか?」
そんな問いが、エレノアの中で静かに芽生え始める——このあと、彼女は“再生”へと向かえるのでしょうか?
読みやすさのポイント(英語学習者向け)
英語学習者の目線で、「この本のここが読みやすかった!」と感じたポイントをまとめてみました。多読に挑戦したい方の参考になればうれしいです。
語彙の難易度のバランスが良い
以下は本書に登場する英単語の一部です。英語学習として頻出ではあるものの、中には難しい単語も見受けられるかと思います。
本書『Eleanor Oliphant Is Completely Fine』は、一般的に「読みやすい英語の小説」として紹介されることが多いですが、実際にはTOEIC 900点台の学習者でも「ん?」と立ち止まるような中上級語彙や表現が登場します。
ただし、それこそがこの作品の魅力でもあります。
エレノアの知的かつ皮肉を交えた語り口や、心理描写の深さは、学習者にとって語彙力・読解力を同時に鍛える良いトレーニングになります。
多読の中で、こうした語彙に出会い、文脈で理解しながら自然に吸収していくことで、辞書で単語だけ覚えるのとは違った「記憶に残る語彙の定着」が期待できます。
英単語 | 品詞 | 意味(日本語) | 例文(簡単な英語) |
---|---|---|---|
adequate | 形容詞 | 十分な、適切な | Her salary was adequate for a simple life. |
articulate | 動詞/形容詞 | はっきり話す/明瞭な | Eleanor is unusually articulate. |
contempt | 名詞 | 軽蔑、侮蔑 | She looked at him with contempt. |
demeanor | 名詞 | 態度、振る舞い | Her quiet demeanor hides her sharp mind. |
disdain | 名詞/動詞 | 軽蔑/見下す | Eleanor often expresses disdain for small talk. |
eccentric | 形容詞 | 風変わりな | People thought she was eccentric. |
elaborate | 形容詞/動詞 | 精巧な/詳しく述べる | She gave an elaborate explanation. |
empathy | 名詞 | 共感 | Raymond shows empathy toward Eleanor. |
facade | 名詞 | 外見、見せかけ | She kept a calm facade, hiding her pain. |
humiliation | 名詞 | 屈辱 | The memory of humiliation still haunted her. |
implore | 動詞 | 懇願する | She implored him to leave her alone. |
inadequate | 形容詞 | 不十分な、力不足の | She felt inadequate in social settings. |
inappropriate | 形容詞 | 不適切な | Her comment was considered inappropriate. |
meticulous | 形容詞 | 細かいところまで気を配る | She kept her home meticulously clean. |
oblivious | 形容詞 | 気づいていない | She was oblivious to others’ feelings. |
patronize | 動詞 | 見下すように扱う | She hated being patronized by strangers. |
peculiar | 形容詞 | 奇妙な | Eleanor had some peculiar habits. |
perception | 名詞 | 認識、理解 | Her perception of normal was quite different. |
preposterous | 形容詞 | 馬鹿げた | The idea was absolutely preposterous. |
recluse | 名詞 | 世捨て人、引きこもり | Eleanor was seen as a recluse by her colleagues. |
reluctant | 形容詞 | 気が進まない | She was reluctant to join social events. |
reminisce | 動詞 | 思い出を語る | She often reminisced about her childhood. |
scrutinize | 動詞 | 綿密に調べる | Eleanor scrutinized every detail. |
solitary | 形容詞 | 一人での、孤独な | She led a solitary life. |
spontaneous | 形容詞 | 自然発生的な、即興の | Raymond was spontaneous, unlike Eleanor. |
superficial | 形容詞 | 表面的な | She avoided superficial relationships. |
tedious | 形容詞 | 退屈な、長ったらしい | She found conversations with strangers tedious. |
trauma | 名詞 | 心の傷、トラウマ | She carries deep emotional trauma. |
vulnerable | 形容詞 | 傷つきやすい、もろい | She felt vulnerable when talking to others. |
withdrawn | 形容詞 | 引きこもった、内向的な | Eleanor was emotionally withdrawn. |
会話文が多く、口語表現が身につく
本書の会話はとても自然で、生きた日常英語のリズムや言い回しを学ぶのにぴったりです。
英語の小説を読みながら、「実際に使える会話表現を学びたい」と感じることは多いと思いますが、『Eleanor Oliphant Is Completely Fine』はまさにその期待に応えてくれる一冊です。
口語表現 | 意味 | 使用例 |
---|---|---|
“No worries.” | 「気にしないで」 | Raymond often says this casually. |
“You all right?” | 「大丈夫?」 | イギリス英語の挨拶として登場 |
“Not really.” | 「そうでもない」 | 否定を柔らかく伝える表現 |
主人公の独り言が多く、「思考表現」が学べる
エレノアの内面の語りが豊富なので、英語で「考え」や「気持ち」を表す表現を学ぶのにとても役立ちます。
たとえば、
“Why do people do that?”
→ 日常のちょっとした習慣(たとえば、誕生日にカードを送るなど)に対して、純粋に疑問を抱いている場面で登場します。彼女の「人間社会への違和感」をよく表しています。
“I suppose that’s acceptable.”
→ レイモンドのカジュアルな服装を見て、「まあ、ギリギリ許容範囲かな」と内心で判断する場面で使われています。皮肉まじりの語りがエレノアらしさを表しています。
“I must try harder next time.”
→ 人とのやり取りでうまく会話できなかったあと、自分に言い聞かせるように反省している場面です。
ユーモアがあるので飽きずに読める
エレノアのズレた常識や素直すぎる発言は、ときにくすっと笑ってしまうユーモアにつながっています。皮肉や自嘲が効いたセリフは、英語表現の面白さを味わう良いきっかけになります。
- “I once Googled ‘how to make friends.’”
→ 本気で「友だちの作り方」をGoogleで検索したと語る場面。笑ってしまう一方で、エレノアの孤独が垣間見える印象的な一言です。 - “Is vodka a fruit?”
→ 「ウォッカって果物だったっけ?」と健康に気を使うふうを装いながら、毎晩の飲酒を正当化しようとする発言。
エレノア特有の“ズレた理論”がユーモラスに表れています。 - “Small talk is pointless and exhausting.”
→ 雑談の場面で、彼女が心の中でバッサリ切り捨てるように呟く一言。思わず「わかる…」と共感してしまう人も多いのではないでしょうか。
レベル感(参考)
『Eleanor Oliphant Is Completely Fine』は、英語学習中級者(CEFR B1〜B2)レベルにぴったりの一冊です。
- 語彙や文法は比較的やさしめながら、内容は深くて読み応えがあります。
- ペーパーバックで約390ページとややボリュームがありますが、
1日10ページずつ読むと、1ヶ月で無理なく読破可能です。
毎日少しずつ、物語とともに英語に浸る習慣づくりにもおすすめです。
こんな人におすすめ
- 英語の長編小説に初めて挑戦してみたい方
- 多読に興味はあるけれど、何を読めばいいのか迷っている方
- ドラマチックな展開よりも、じんわり心にしみる物語が好きな方
- 英語で感情表現や内面描写を学びたいと考えている方
まとめ
『Eleanor Oliphant Is Completely Fine』は、やさしい英語と深いメッセージをあわせ持った、
まさに英語多読の第一歩にぴったりの小説です。
物語を通して、
「英語でも感動できる」
「英語で考えるとはどういうことかが少しずつわかってくる」
そんな体験が、きっと待っているはずです。
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